スウェーデン人の著者フレデリック・バックマンによる『幸せなひとりぼっち(A Man Called Ove)』を読み終え、その後この小説をもとにしたスウェーデン制作の映画『A Man Called Ove (2015』をAmazonプライムでレンタルして見た。
『幸せなひとりぼっち(A Man Called Ove)』
日本語タイトルは好きじゃない
本のタイトルは『A Man Called Ove(オーヴェという名の男)』というシンプルなものだが、日本語訳ではこのスウェーデン映画が日本で公開される際につけられた独自の題名『幸せなひとりぼっち』に変えられている。これには個人的にとても違和感を感じていて、海外映画を日本向けに売る時によくある売り方だが、マーケティング戦略で少しでもタイトルから映画の内容を分からせようとしていて、いやらしい、と思ってしまう。『幸せなひとりぼっち』って、オーヴェは妻を失ったけれどひとりぼっちではなかったし(終始ひとりになりたそうではあったが)、シンプルに彼が幸せだと言えるものではない。ただ、日本語の題名は置いといて、素敵な話だった。
読書記録
タイトル:『幸せなひとりぼっち(A Man Called Ove)』
著者:フレドリック・バックマン/Fredrik Backman
出版社:早川書房
フォーマット:Kindle
読書期間:2025/09/14-2025/09/18
小説について
これから何が起こるんだろうとわくわくするようなドラマチックな展開はないが、ただの頑固で誠実な1人のおじさんのことを、読んでいくにつれて理解が深まり、親しみと愛情を芽生えてくる。簡単なあらすじは、最愛の妻を失った59歳の頑固で口数の少ないおじさんが40年以上働いた会社に早期退職という名目で辞めさせられ、生きる意味を失った彼が妻の後を追おうと試みるが、新しく向かいに越してきた家族(特にパルヴァネと子供達)に振り回され、なかなか死ぬことができず、本人の意思と反対にどんどん周りに人が集まってくるという話。
最初にiPadを買う際に電気屋さんのスタッフとやり合うシーンだったり、花を買うのに2束だと割引があるけど1束だと正規の値段でそれに文句を言う場面は、うわー偏屈頑固じいさんだな、と思うし、側から見たら最近の言葉で言えば「老害」だろうなと思う。オーヴェのことを知らない身としては、あまり関わりたくない人だと思う。でも、そんな人にも彼を心から愛していた最愛の人がいて、彼の心の奥には潜む深い愛情があって、彼のことを知れば知るほど、実は魅力的な人だと気付かされる。現代には、責任を持ちたくないけど遊びたいヘラヘラしている人たちがたくさんいるので、そういう類の人とは正反対だ。個人的に59歳という設定よりも、もう少し年上でもいいんじゃ無いかと思ったが、早期退職ということを考えると59歳がいい設定なのだろうか。最近の59歳はもう少し若い気がするけれど、もしかしたら私の親世代が似たような歳になってきているからそう思えるのかもしれない。
個人的に、本はすごく面白いというよりも心が温まる、きゅんとする、優しい話だった。あとがきに書いてあったように、オーヴェが小説を通して変わるのではなく、読み手がオーヴェを理解するから彼に対しての印象が変わっていくと、本当にそうだなと思いました。
映画『A Man Called Ove (2015』と小説の違い
読み終わった後にスウェーデンの同じ名前の映画をAmazon Primeでレンタルして見た。小説を読んだ後にすぐその小説題材の映画を見るのは初めてだったが、小説と映画での描かれ方の違いをわかって、改めて小説がわかる。映画はよく作られているとが思うが、個人的に小説の中でいいなと思ったエピソードが映画では一瞬しか取り上げられておらず、実際はこの場面はもっと深いのに!!と思ってしまった。
たとえば、小説ではオーヴェが仕事帰りの早朝の電車の中でソーニャに出会った時にひとめぼれして、わざわざ駅員にシャツを借りて身だしなみを整えてから彼女の隣に座り、そこからソーニャが挨拶をしてから話が始まったこと。それ以降、近くにある軍で働いていると嘘をついて数ヶ月毎日同じ時間の電車に乗ってソーニャに会いに行き、最終的に痺れを切らしてソーニャがオーヴェをディナーに誘う。そんな甘酸っぱい2人の出会い、話し下手で誠実な男性像とすごく愛らしく明るい素敵なソーニャの女性像が映画では描かれていない!!!!💔映画内では、オーヴェが2回目にソーニャを電車の中に見つけた際にお金を返そうとして、その代わりにソーニャがディナーに行こうよということになっていた。
また、小説では話がオーヴェ自身の一人称で進むので、彼が誰かに語っているのではなく彼が口では語らないけど心の中で思っていることが読めるけれど、映画では外からみた第三者の視点になるので、小説の中でオーヴェの内心で語られていた内容が、映画ではオーヴェがパルヴァネに少しずつ心を開いて自分から過去の話を誰かに話すことになっていた。これで彼に対する読者と視聴者の印象は変わると思った。
また、向かいに越してくる家族の若いお母さん、イラン人のパルヴァネの印象が私が小説を読みながら思い描いていたのと少し違った。映画よりももう少しハキハキしていて、女性らしくいい意味でずうずうしく強い女性をイメージしていたが、映画では優しくて忍耐強い女性のように見えた。
個人的に映画では小説の良かった文がたくさん端折られていて残念だったが、それでも2時間弱の映画だったので、映画の形にするには時間の制限上仕方ないのか。原作を読んでから映画を見て文句を言う人の気持ちってこうなのかなと思った。でも、心温まる素敵な映画だと言うことは間違い無い。
アメリカ映画でトム・ハンクス主演の『A Man called Otto』は同じくこの小説をもとにして、アメリカに場所を変えてリメイクしたものらしいが、個人的にスウェーデンの静かな住宅街に住むおじさんとスウェーデンの車サーブと、大きな経済大国アメリカの印象とどうしても結びつかず、どうしても見る気にならない。Redditなどを見ると、色々酷評が見つかるので、見ないからといって何かを失ったことにはならないだろう。
著者フレドリック・バックマン
この小説の著者はスウェーデン出身のコラムニスト、ブロガー、小説家であるフレドリック・バックマン。彼は1981年で今は44歳。2012年に出版された作品なので、もっと年上の小説家かと思っていたらだいぶ若くてびっくりした。しかも彼の一番売れているこの小説が処女作らしい。
最近見た映画『「The Penguin Lessons」(2024)』と似たような、心の暖かさを感じさせてくれる小説だと思った。
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