森絵都の『カラフル』は、読書初心者におすすめの本としてあちこちに登場するので、Kindleで買っておいて積読状態にあった。初めに思った印象は、著者のペンネームがおしゃれで素敵。『カラフル』のカバーが素敵な黄色で、印象に強く残っていた。
読書記録
タイトル:『カラフル』
著者:森絵都
出版社:文藝春秋
フォーマット:Kindle
読書期間:2025/09/09-2025/09/10
Kindleで200ページ弱というかなり短い小説ということで、これは気楽だと思って読み始めた。すごくテンポ感がよくどんどん進む。
読み始めたのは夜寝る直前、読みやすくておもしろくて30分くらいで本の1/4を読み終えた。次の日は仕事の移動時間が結構長かったので、その時間を使って読書。帰宅する頃には読み終わった。こんなに読みやすくテンポ感のある本は、久しぶりな気がする。最近読んだ本の中で、一番読みやすかった本は村田沙耶香著の『コンビニ人間』だが、『カラフル』は前者に比べて圧倒的に気持ちの良いすっきりした読後感がある。
冒頭に天使があらわれ主人公のガイドとなるという流れは、少しこれまた最近読んだ川村元気著『世界から猫が消えたなら』を悪魔を思い出した。
私はただ、”初心者向け””高校生に読まれている”くらいしか知らず、まったく話のあらすじなどを読まないまま読み始めた。タイトルの『カラフル』という名前はとてもシンプルで、タイトルからはどんな話か予測できないのも先入観がなくてよかった。素敵な明るい黄色のカバーから明るい、穏やかな話かと思って読み始めたら、冒頭から自殺や売春、壊れかけた家族のような暗いトピックがでてきて、個人的に予測外だった。絵に情熱を注ぐ主人公が絵の具の色などについて語り始めた時には「ああ、なるほど、これがカラフルに繋がるのか」と思った。最初の方思ったより暗い悲しい状況が出てきて、その後多くの誤解が解けて話が好転していくので、気持ちが軽くなっていく。
個人的に印象が残ったのは、主人公が父親と釣りに行く場面。人間ってとても複雑のように見えて、あらゆる行動の理由となる意思は結構単純なものだったり、普通の人生ってつまらないように見えて山あり谷ありだということ。悪いことがあってもいつまでも続くわけじゃない。
おまえの目にはただのつまらんサラリーマンに映るかもしれない。毎日毎日、満員電車に揺られてるだけの退屈な中年に見えるかもしれない。しかし父さんの人生は父さんなりに、 波瀾万丈だ。いいこともあれば悪いこともあった。それでひとつだけ言えるのは、悪いことってのはいつかは終わるってことだな。ちんまりした教訓だが、ほんとだぞ。いいことがいつまでも続かないように、悪いことだってそうそう続くもんじゃない。
自殺の原因は一つの大きい悪いことではなく、小さいことの積み重ねで心が病んでいってしまう。そして、その悪いことももしかしたら誤解かもしれない。そして誤解をしていて良い場合もある。
この地上ではだれもがだれかをちょっとずつ誤解したり、されたりしながら生きているのかもしれない。それは気が遠くなるほどさびしいことだけど、だからこそうまくいく場合もある。
Amazonのレビューを読んでみると、人によってはもう冒頭で、主人公の犯したあやまちと主人公が誰かということがわかってしまったという感の鋭い人もいるようだが、私はまだ読書歴が浅いからか、察しが鈍いのか、主人公と同じタイミングでああ、そういうことだったのかとなった。
こういう本は、内容の思い話や長い小説、古典の合間に読むと気休めになってありがたい。すごく楽しんで読めたので、森絵都さんの他の本も読んでみたい。

