現実と理想の狭間で〜ロンドンの日常

イギリス・ロンドン在住の20代。ロンドンで出会った夫と二人暮らし。芸術と旅行好き。本を楽しみたい。

映画『Priscilla(プリシラ)』

今回のロシアへの旅行はターキッシュエアラインを利用したんですが、サンクトペテルブルグイスタンブールイスタンブールーロンドンの2つの便では私にしては珍しくフライト中全く寝ずに映画を3本見ました。見たのは『The King's Man(2021)』、『Wonka(2023)』、『Priscilla(2023)』の3本。

 

特に印象深かった映画『Priscilla』のレビューを簡単に残したいと思います。

© The Apartment S.r.l All Rights Reserved 2023

もともとミュージシャンや誰かのバイオグラフィー映画は興味があり、特にプリシラエルビス・プレスリーの妻は昔エルビスドキュメンタリー映画を見たこともあり気になっていました。ミュージカル要素もあり最後はハッピーエンドなファンタジーである『Wonka』をちょうど見終わって、残りのフライトでさあ何を見ようかなと思ってセレクトした『Priscilla』。『Wonka』の後の楽しいファンタジックな軽い気持ちから、あまり気持ちを整えないまま『Priscilla』を見てしまったためか見終わった後は、なんだか心の中に重しがあるような感覚に陥りました。もし気軽に映画を見たい気分の時は、この映画はお勧めしません。笑

 

私は小さい頃から母がたまにかけていたエルビスのアルバムで音楽に親しみ、King of Rock’n rollという称号をもつエルビスは誰もが知っておくべき20世紀の重要ミュージシャンという感じで、特別にファンなわけでもないけど音楽は時々聴いていました。また、エルビスプリシラの娘・リサマリーはマイケルジャクソンの元妻。大学生の時に東京の地元の映画館でエルビスドキュメンタリー映画を上映する際に有名な音楽評論家兼作詞家の湯川れい子さんがゲストでトークショーに来たことがありました。私は小さい頃からマイケルジャクソンのファンで、彼のいろんな評論やテレビ番組を見ていたので、そこ伝手に湯川れい子さんを知っていて、エルビスに詳しい湯川さんのトークショーは必見だと思って行った記憶があります。私は忘れっぽいので内容はすでにぼんやりとしか覚えていませんが、そこでエルビスがすごく若い女性に恋をして長らく付き合ったのちに結婚したということは知っていました。なんとなく源氏物語光源氏と紫の上のような印象を受けました。でもちゃんとエルビスプリシラの馴れ初めや関係性を知ったのはこの映画を通してです。

 

14歳のプリシラとスーパースター

(ここからはネタバレになるので映画を見て内容を知りたいという方はスキップしてください)エルビスプリシラエルビスが米軍軍人として西ドイツに駐在している時に、父の赴任についてきていたプリシラと出会います。この時、エルビスはすでにミュージシャンとしても映画出演でもスーパースターで有名人の24歳、プリシラはわずか14歳でした。エルビスは最愛の母を亡くした後心に傷を負っていて、また故郷から遠く離れてあまり地元の人もいない場所で孤独を感じていた時に出会ったアメリカ人のプリシラに心を開いたそうです。また24ヶ月の軍人生活がどのように彼のエンターテイメントのキャリアに響くかもかなり心配してたそうです。ただ、私は現在20代後半ですがほぼ同じくらいの歳の男性(夫をイメージ笑)がパーティで出会ったまだ中学生の可愛らしい女の子に心の内を開いて話すというのはなかなか想像し難い…。笑 でも音楽に優れている人は少し普通と違うし、すでに人々のアイドルで常に人が周りにいるようなエルビスの立場や、気持ちが荒んでいる状態の方のことを冷静にジャッジも難しいですね。プリシラの性格も元々おとなしくエルビスと同様に故郷から離れてあまり西ドイツでの生活にも慣れないまま孤独に過ごしていたそうなので、それがよかったのかもしれません。

 

プリシラの親になんとか許しを得て、エルビスアメリカに戻るまで数ヶ月一緒に出かけたりデートを重ねたようですが、エルビスアメリカに帰りまた忙しくなってからは2年以上会うことはなくたまにの手紙などで関係を繋いでいたようです。プリシラはかなり落ち込んでいたようで、映画では母親が学校の同年代の男の子とかはどうなのかなんて話してるシーンがありましたが、少しネットで読んだところによればその間は同年代の男の子と学校のダンスに行ったりデートなどはしていたようです。

 

誰もが憧れるプリンセス街道のようだが

そして高校を卒業する少し前の休暇に2週間ほどエルビスのお屋敷に泊まりに行きます。エルビスの祖母やオア政府などがとてもよくプリシラの世話をしてプリンセス扱い。エルビスの取り巻きもみんな、これがエルビスが気に入った女の子か〜なんて目で感心して集まってきます。休暇中はエルビスの寝室で一緒に過ごし、親密になろうとするプリシラですが、エルビスはまだ若いプリシラとはちゃんと線を引き性交渉はしなかったそうです。ハンサムで大切にしてくれるスーパースターのエルビスに完全に虜になったプリシラは、休暇が終わる頃にもう西ドイツの両親の元に帰りたくないと騒ぎます。そしてエルビスプリシラの両親の交渉の上、アメリカの高校をしっかりと卒業させるという条件の上(また将来的に結婚するというのもあったらしい)プリシラエルビスのお屋敷に正式に移住します。エルビスの家族と家政婦が世話係になり、エルビスの頑丈なボディーガードに守られてアメリカでのカトリックの高校の生活が始まりますが、まわりの生徒はエルビスプリシラがデートしていることを知っていて噂話をするだけで、もともと社交的とは言えないプリシラは友達のいないまま学校に通います。エルビスは映画の撮影などで家を長期で留守にし、その代わりにというようにエルビスプリシラに子犬をプレゼントします。公共の芝生で子犬と戯れていると、エルビスの家族が見つけて、あなたはもう公共の場で自由に過ごすことはできないと注意されます。また、プリシラはアルバイトをしたいと申し出ますが、エルビスからは自分と一緒にいたければ外の世界に触れることはできないと、許してもらえません。なかなか家に帰ってこないエルビスを待ち続けるプリシラは特に何もやることもなく子犬と一緒に退屈に過ごします。

 

エルビスの”もの”となったプリシラ

もともとプリシラは美しいブラウンの髪を持っていますが、エルビスは突然「もっと目を強調した方がいい、目を強調させるメイクをしよう。黒髪にした方がいい。」とよりエルビス自身の好みになるようにアドバイスし、エルビスにより好かれたいプリシラは喜んで美容院に行き黒髪に変え、メイクも濃くするようになります。この時のボリュームのある黒髪と目を太いアイラインで囲ったメイクをした彼女が私が覚えていたプリシラのイメージです。またエルビスエルビスの取り巻きの男たちと一緒に洋服の買い物に行き、プリシラはほぼバービー人形状態。ほとんどプリシラの意見は反映されずに、エルビスエルビスの取り巻きが気に入ったものをまとめ買いしてそれらをプリシラが着ることになります。エルビスがいない間に買ったであろう細かい模様のあるドレスを着ていたプリシラを見たエルビスが、それは似合わないと辛辣にコメントするシーンがあります。プリシラは怒って、わかった返品してくると言ってバタンとドアを閉めますが、それ以上の反抗はできません。エルビスは眠るために、もしくは活発に活動できるように薬物をつねにベッドサイドに置いて、定期的に服用していました。その影響もあり彼の気性は不安定、とても乱暴な行動をとったかと思えばすぐにごめんなさいと謝るような始末。プリシラが薬物の影響に少しでも口を出そうとすると、自分には医者がついているから口出すなと言って終わります。

© The Apartment S.r.l All Rights Reserved 2023

男社会の中で孤独に生きる

ここまで書くと、エルビスが本当にひどい恋人だったと思うかもしれません。けれどエルビスプリシラを大切にしていた・愛していたというのには間違いないでしょう。映画のあらゆるシーンで、彼女に心のうちを晒して癒しを求める姿や、彼女のかわいらしい姿に目を奪われているエルビスを見ることができます。きっとその頃の時代もあったのでしょう。エルビスに限らず、米軍軍人の(義)父を持つプリシラは小さい頃から男性社会の中で生きてきたと言えます。プリシラに願望や望みがあったとしても、常に決定権はプリシラではなく他の男性にありました。例えばある軍人がエルビスの家で行われるパーティープリシラを誘った時も、プリシラは行きたいと家族にお願いをしますが両親(特に父)は反対。その軍人がではお父さんに私が交渉しましょうと、交渉してその男同士の会話で帰宅時間やちゃんとその軍人とその奥様がプリシラを見るという条件付きでプリシラのパーティへの参加は許されます。プリシラエルビスの家に訪ねたいと相談した際も、エルビスプリシラの父の男同士の交渉によって実現されました。エルビスの屋敷の一員になったあとも、エルビスと一緒にいるには常にエルビスの取り巻きの人とも一緒にいるということ。もともとおとなしく若いプリシラのまわりにはエネルギッシュでお金使いも荒い奔放な男たちばかり、それについていくのも大変そうでした。映画内では、エルビスプリシラは結婚するまで性交渉をしたことなかったように描かれています。(プリシラの著書にそう書いてある)出会った時から大切にしていたのでしょうが、彼らが結婚したのは出会いから8年後のプリシラが22歳の時。若い女性を性対象と見るようなひどい男性がいることを考えるとそれよりはいいのに間違いないですが、彼女も愛する人を持つ女性。17歳から同じ屋根の下で、同じ寝室で過ごし、映画の中ではプリシラが何度かエルビスに迫るシーンがありますがエルビスは断り続けます。それも、ある意味でコントロールであり、残念ながらプリシラには恋人と親密になる権利さえ得られなかったと言えます。

 

エルビスはスーパースターであり、キャリアがあり、外の世界を持っています。それに対してプリシラエルビスの屋敷からほぼ出ることはなく、外の世界を知ることはできずすごく窮屈な生活を強いられていました。プリシラエルビスと別れた時もエルビスを愛していたし、別れた後も子供のためによく会い親しくしていたと語っています。エルビスはとても難しい恋人だったと言えるでしょう。

 

見た後味はよくない

ソフィア・コッポラの映画を見たのは今回で2回目です。前に見たことあるのはキルステン・ダンスト主演の『マリーアントワネット』。両作品とも美しく気品のある描写が印象的です。またなんだか後味がもやもやするような、すっきりしない終わり方も共通しています。というわけで、飛行機がロンドンに着陸するぎりぎりに映画自体を身終えたので心がモヤモヤしたまま、着陸後にいかにも帰国が不満のような妙に機嫌の悪い人になってしまいました。また、エルビス役を演じたジェイコブ・エロルディはNetflixシリーズの『Kissing booth』で知っていたのですが、その時の役柄が(私にとって)気に食わない男性像だったのもあって、余計に腹が立つような気分。笑 プリシラ役のケイリー・スピーニーはとても可愛かったです。妙にリアルでとても興味深い内容だったと思うので、個人的に見てよかった、とは思いますが、他の人に見るのを勧めるかと言われると、どうかな、難しいところです。将来時間があればこの映画の元になったプリシラの自伝を読んでみてもいいかもしれません。

プリシラ・プレスリー、エルヴィス・プレスリーNewlyweds Elvis and Priscilla Presley who met while Elvis was in the Army prepare to board their...
Photo: Bettmann/Getty Images

 

ここまで読んでいただきありがとうございました。

また他の記事でお会いしましょう( ◠‿◠ )⭐️

 

 

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